
ねえゆう、こぼしたジュースは、にゃんでもどらないの?

どうしてか気になるね。時間の向きが見えるからなんだ
逆向きの動画は、どうしてすぐわかるの?


にゃんと!! プリンが空を飛んで、お皿にもどった!

それを見たら、たぶん逆向きの動画だと思うよね

落ちたプリンは広がるけど、勝手に集まるのは見たことがないんだね

そう。まっすぐ進むボールなら、逆向きでもわかりにくいんだ

逆再生なら、ゆうが食べたプリンも出てくる!?

あまり見たくない逆再生だねえ。おなかも、びっくりするよ

じゃあ、時間そのものと、プリンの変化はちがうの?

そう。日ごろ見ている「時間の向き」は、変化から見えているんだ
小さな世界の法則は、逆向きでも通ることが多い


動画を後ろ向きにしても、気づけないかもしれないの?

小さな玉がぶつかるだけなら、前と後を替えても自然なことがある

前と後を替えても、自然に見えることがあるんだね。

粒の場所と速さを、ぜんぶ正確に反対へできたとするよ

もとの動きも計算できるの?

多くの基本の法則では、元へたどる動きも計算できるんだ

みいが、ぜんぶの粒を逆向きにけるー!

速さも向きも、ぜんぶぴったり合わせる必要があるよ

弱い力の世界には、時間の向きの小さなちがいも見つかっているんだね。

そう。でも、それだけでプリンがもどらない理由にはならないんだ
エントロピーは「ありえる並び方」の多さ


ここで「エントロピー」を使って考えてみよう

えんとろぴー? おやつの名前なの?

箱の左だけにおやつがある並び方は、できる組み合わせが少ない

左だけにおやつが集まるほうが、めずらしいんだね

エントロピーは、見た目が同じになる細かな並び方の多さに関係する量だよ

箱じゅうに散らばるほうは、できる組み合わせがもっと多いの?

うん。箱じゅうに散らばるほうは、できる組み合わせがずっと多いんだ

おやつが散らばるなら、みいが集める!

それは片づけじゃなくて、食べているだけだねえ

ゆう、またおやつの話にしてる!

たくさんの粒は、少ない並び方より多い並び方になりやすいんだ
「ぜったい禁止」より、「ほとんど起きない」


散らばったおやつが、たまたま左に集まることもあるんだね。

小さな世界で短い時間なら、そういうゆらぎはありえるよ

でも、たまたまなら、もどることもあるんでしょー?

でもプリンほど粒が多いと、元どおりの並び方はものすごく少ない

見ていたみいの記憶まで、もどす必要があるんだね……。

床、空気、音、出た熱まで、ぜんぶ同時にもどす必要があるんだ

ゆう、もどすものが多すぎるよ!

写真や足あとも、周りに熱を出してできる記録なんだね

じゃあ昨日のおやつを食べ直すのは、やっぱりむりなのー!?

新しいおやつをお願いするほうが、ずっと起こりやすいよ。

だから日ごろの世界では、時間はほとんどもどらないように見えるんだ。

よかったー! 新しいおやつなら、お願いできるんだね
ねこ換算

星形おやつ50個を箱に入れて、1個ずつ左右へゆらすとするよ

ぜんぶが左半分へ集まるのは、どれくらいめずらしいの?

ぜんぶが左半分へ集まるのは、およそ1126兆分の1の確率なんだ

にゃんと!! 1秒に1回ジャンプしても、いつ見られるの?

平均でおよそ3568万年。みいがおよそ1126兆回ジャンプする長さだね

それまで、おやつを待つのはむりだー!
3ぎょうまとめ
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逆向きの動画が変に見えるのは、日ごろの変化に向きがあるから
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エントロピーは、細かな「ありえる並び方」の多さに関係する
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元にもどる変化は禁じられた魔法ではなく、ほとんど起きない
きょうのナゾ

宇宙は、にゃんでそんな特別な始まり方をしたの?

昔の宇宙は、重力から見ると特別に低いエントロピーだったようなんだ

それって、まだ誰にも理由がわからないなぞなの?

うん。宇宙の始まり方の理由は、まだ見つかっていないんだ
つぎはこれ!
おとなメモ(おうちの方・先生へ)
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「エントロピー=散らかり具合」は直感のためのたとえです。統計力学では、巨視的に同じ状態へ対応する微視的状態数を (\Omega) として、(S = k_B \ln \Omega) と関係づけます。
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熱力学第二法則は、適切な孤立系についての統計的な法則です。冷蔵庫や生物、片づけのような局所的なエントロピー減少は、外へ出す熱などを含めた全体では禁止されません。
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多くの微視的な運動方程式は時間反転に対して対称的です。一方、弱い相互作用ではT対称性の破れが観測されています。この破れを、日常の不可逆性の直接の説明としては扱っていません。
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「粒を完全に逆にする」は概念を示す単純化です。量子測定、境界条件、粗視化には理論上の論点があり、現実の宇宙を必ず再生できるという意味ではありません。
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初期宇宙は物質・放射だけを見ると熱平衡に近い一方、非常に一様で、重力を含めれば特別な低エントロピー状態だったと考えられます。なぜそうだったかは未解決です。
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ねこ換算の根拠: (2^{50} = 1,125,899,906,842,624)。1秒に1回なら約3568万年です。50個が独立に左右へ等確率で入る模型であり、実物のプリンの確率ではありません。
参考にした資料
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D. J. Evans, E. G. D. Cohen, G. P. Morriss — Probability of Second Law Violations in Shearing Steady States: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.71.2401
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Gavin E. Crooks — Entropy production fluctuation theorem and the nonequilibrium work relation for free energy differences: https://doi.org/10.1103/PhysRevE.60.2721
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BABAR Collaboration — Observation of Time-Reversal Violation in the B0 Meson System: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.109.211801
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Sheldon Goldstein, Roderich Tumulka, Nino Zanghì — Is the Hypothesis About a Low Entropy Initial State of the Universe Necessary for Explaining the Arrow of Time?: https://arxiv.org/abs/1602.05601
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Huw Price — Cosmology, Time’s Arrow, and That Old Double Standard: https://arxiv.org/abs/gr-qc/9310022
(最終更新日: 2026-08-11)