
ねえゆう、にゃんで箱を見ないあいだ、ねこは生きてるの? それとも死んでるの?

おもしろいところに気がついたね。そのねこは本物のねこじゃなくて、考えるためのお話だよ
シュレディンガーのねこは、本当にいたねこ?


えっ、ねこを箱に入れたお話じゃないの?

これは1935年に、シュレディンガーという博士が考えた思考実験なんだ

頭の中で「もし、こうだったら?」って考えるんだね

うん。実際にねこを箱へ入れた実験ではないよ。まねはしないでね

じゃあ、ふたをした箱の中は、どう考えるの?

閉じたおやつ箱を思いうかべて。中身が見えなくても、おやつは一つの場所にあるよね

見ないあいだに、おやつが2倍になってるかも! ふたをあけたら、おやつが2こだったらどうしよう!

2こあったら、みいがひとつ食べちゃおうっと!

それならうれしいけど、ふつうの箱は見えないだけで、中身は一つなんだ

小さい世界では、見えないだけじゃないことがあるんだね!

そうなんだ。このお話は、小さい世界だと何がちがうかを考える、少し変わったねこなんだよ
小さなつぶには「かさなった状態」がある


小さな世界では、何がちがうの?

原子や光みたいな小さなつぶでは、いくつかの状態が重なることがあるんだ

状態が重なるって、二つの道がいっぺんにあるかんじ?

水面の波が重なって模様を作るのに、少し似ているね

じゃあ、みいも右と左をいっぺんに走れるの!? あっちでもこっちでも、みいが走ってるみたいに!

あっちにもこっちにもみいがいたら、おやつも2ついるねえ

ゆう、また おやつの心配なの?

ご、ごめん。大きなねこのみいではそうは見えないんだ。小さなつぶだけのふしぎな性質だよ

一ぴきの みいではそう見えないけど、見えない二つの道の手がかりはのこるんだね!

うん。博士たちは重なったあとにできる模様を調べて、確かめるんだ
ねこは「生き死にが両方」の答えではない


じゃあ箱を開ける人が見たしゅんかん、ねこの運命が決まるの?

人の目や気持ちが、まほうみたいに決めるわけではないんだ

まわりのものも、ねこにふれてくるんだね

空気や光もふくめて、小さなつぶが測定器やまわりのものにふれあうんだ

そっか、空気や光までふれてくるんだね

ふれると重なりを保ちにくいんだ。大きなものへ広げて起こることを考える役なんだよ

じゃあ、ねこが生きてるか死んでるか、どっちなの? さびしいな…

……うん。ここにいるよ

ゆう! ねこの答えを、おやつでごまかさないで!

いや、量子おやつも……やっぱりおやつは一つでいいねえ

量子おやつ!? ねこの話だよー!
本物の「ねこ状態」は、小さな世界でたしかめる


本当に重なった状態は、どこで見つけられるの?

原子や光、それから電気が流れやすい超伝導回路で、作って調べているよ

超伝導回路でも、重なるの?

うん。でも、まわりと少しでもふれあうと、重なりの手がかりは消えやすいんだ

そっとしておくことが大事なんだね

あっ、しまっておいたおやつが、気づいたらなくなってるみたいだね

それはみいが食べたからかも。でもかんじは近いね

ゆう、すぐみいのせいにするんだね

そのことをデコヒーレンスというんだ。小さな合唱が、町の音で聞こえにくくなる感じかな

そっか。本物のねこまで重ね合わせにするのは、すごくむずかしいんだね

そうなんだ。けれど小さな世界をていねいに調べると、量子のルールが少しずつ見えてくるよ
ねこ換算

「ねこ状態」に似た分かれ方を作った単一イオンは、80nmより大きく分けられた例があるよ

80nmって、どれくらい小さいの?

ねこのひげを0.1mmとすると、そのおよそ1,000分の1より小さいんだ

にゃんと!! ひげのふとさに1,000こならべても、まだたりないんだ!
3ぎょうまとめ
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シュレディンガーのねこは、本物のねこを使わない思考実験
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原子や光の小さな世界には、状態が重なる重ね合わせがある
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重ね合わせは、まわりとふれあうと保ちにくくなる
きょうのナゾ

重ね合わせは、どこまで大きくして、どれくらい長く守れるの? まだ答えが決まっていないなぞなの?

うん。博士たちも、答えを探している途中なんだ

小さな量子のふしぎが、いつ大きな世界らしく見えるのかも、研究が続いているよ
つぎはこれ!
おとなメモ(おうちの方・先生へ)
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シュレディンガーの猫は、量子力学の重ね合わせを巨視的な生死へ拡張したときの問題を示す1935年の思考実験です。実在のねこを使う実験ではありません。
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本文の「水面の波」「小さな合唱」は理解のためのたとえです。量子状態そのものは水の波や音ではなく、重ね合わせは干渉実験などで無知とは区別して調べられます。
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「見る」は人の意識ではなく、測定器や環境との物理的な相互作用を含みます。デコヒーレンスは、なぜ観測結果が一つに見えるかという解釈上の問題すべてを解決する説明ではありません。
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本文の「電気が流れやすい超伝導回路」は簡略表現です。超伝導は「流れやすい」のではなく、ある温度以下で電気抵抗が完全にゼロになる状態を指します。
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ねこ換算の根拠: 80nm = 0.00008mm。ねこのひげの太さは実測でおよそ0.06〜0.3mmの幅があり、ここでは0.1mmを仮定しています。80nmは0.1mmの約1,250分の1です。
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80nmの出典は1996年のNIST(Monroeらによる単一9Be+イオンの実験)で、「80ナノメートル以上、イオン自身の大きさの約11倍」と報告されています。その後2016年にはETHチューリッヒのグループが240nm離れた波束の干渉を観測しており、記録は更新されています。
参考にした資料
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NIST — Schroedinger’s Cat in an Atomic Cage(80nmの分離の出典): https://www.nist.gov/news-events/news/1996/05/schroedingers-cat-atomic-cage
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NIST — A “Schrödinger Cat” Superposition State of an Atom(Monroeら1996の論文情報): https://www.nist.gov/publications/schrodinger-cat-superposition-state-atom
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American Physical Society — Circa March 1935: Schrödinger’s Paradoxical Cat(思考実験の背景): https://www.aps.org/apsnews/2002/03/march-1935-schroedingers-paradoxical-cat
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Erwin Schrödinger (1935) — Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik, Die Naturwissenschaften 23, 807–812: https://doi.org/10.1007/BF01491891
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Kienzler et al. (2016) — Observation of Quantum Interference between Separated Mechanical Oscillator Wave Packets, Phys. Rev. Lett. 116, 140402: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.140402
(最終更新日: 2026-09-04)