
ねえゆう、かべをすりぬけちゃう粒が、宇宙にはいるの?

かべから急に出てきたら、ちょっとこわいよね?

いい質問だね。実はね、とっても小さな世界では、そんなふしぎが起きるんだ
小さな粒は「いる場所」がぼんやりしている


電子みたいな、とっても小さな粒はね、ボールみたいに一本道を進むだけじゃないんだ

ボールみたいに、道を一つだけ進むんじゃないの?

うん。「ここにいる」とは限らず、「ここらへんに、いるかもしれない」って、ぼんやり広がっているんだよ

「いるかも」が、粒のまわりに広がる感じなんだね!

ゼリーの中に、ジャムのあまい香りがふわっと広がっているのと、ちょっと似てるかな

香りみたいに、かべの向こうにも少し広がるんだね!

そう。粒のいる場所は広がっていて、かべの手前にも向こうにも、ちょっとだけ「いるかも」が残るんだ

にゃんと!! みいのしっぽもぼんやりしたら、おやつの戸だなを通れそう!

戸だなの中で、おやつが先にみいを見つけてくれるの?

みいのしっぽは大きいから、それはむずかしいなあ……
高いかべの向こうに、ひょいと見つかる?


この、かべの向こうまで少し広がる「いるかも」のことを、量子トンネル効果っていうんだ

トンネルって、穴をほって進む感じなんだね。かべの中って、ちょっとこわいよ

じゃあ、向こうへひょいっと移るってこと?

ほらないんだ。かべをよじのぼって越えるんじゃなくて、気づいたら向こう側で見つかる、って感じなんだよ

にゃんで「トンネル」って名前なのに、ほらないのー!

かべがうすいほど、粒が軽いほど、向こうで見つかる「かも」は大きくなるよ

うすいかべと軽い粒なら、向こうの「いるかも」も大きくなるんだね!

じゃあゆうが小さくなったら、かべも通れちゃう?

ぼくがかべを通れたら、おやつ売り場への近道だねえ

ゆうは大きいから、むりだー!

ふふ、そうなんだ。人間もねこも大きすぎて、この「かも」はほとんどゼロになっちゃうんだよ
太陽のまんなかでも、小さな近道が役立つ


太陽のまんなかでは、プラスの電気を持った原子核どうしが、いつもは反発しあってるんだ

反発って、仲が悪いの?

同じ極どうしの磁石を近づけると、ぐいっと押し返されるよね。あれと似てるよ

あ、それやったことある! ぐいーんって!

でも、この「かべの向こうに見つかるかも」のおかげで、ほんの一部の原子核はぎゅっと近づけるんだ

「かも」があると、反発している原子核も近づけるの?

くっつくこともできるんだよ。これを核融合っていって、太陽が長い間かがやきつづける理由のひとつなんだ

にゃんと!! 太陽の中にも、粒のひみつトンネルがあるんだね!

……みい、びっくりしたねえ。

ふう……なんでも通れるトンネルじゃないんだね。

そう。太陽の中がとても熱くて、ぎゅうぎゅうにこんでいることも、大事な理由なんだ
すごく小さなすきまを「見る」道具にもなる


このふしぎは、道具としても使われているんだ

ふしぎなことも、道具になるんだ!

走査トンネル顕微鏡、略してSTMっていう機械だよ

むずかしい名前……なにをする機械なの?

とっても細い針を、物のひょうめんにギリギリまで近づけると、すきまをこえて小さな電気が流れるんだ

電気の流れで、でこぼこのようすがわかるんだ!

それを測って、でこぼこを調べるんだよ

みいのひげで、でこぼこを感じるのとそっくり!

みいのひげで、暗い場所のかべの形をそっと探るのに、ちょっと似てるかな

にゃんと!! みいのひげ顕微鏡でおやつの表面も見える?

原子を見る針は、みいのひげよりずっとずっと細いんだよ
ねこ換算


かべが分厚いほど、トンネル効果は起きにくくなるんだ

分厚いほど、向こうで見つかりにくくなるんだね?

そんなに分厚いと、ちがいが大きいの?

ねこ用ドアを1枚重ねたときと、100枚重ねたときを、くらべてみようか

100枚も!? ぜったい通れないよ!

そうなんだ。100枚のドアの向こうで見つかる「かも」は、1枚のときよりずーっとずーっと起きにくくなるんだよ

このちがいが大きすぎるよー!
3ぎょうまとめ
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とっても小さな粒は、いる場所がぼんやり広がっていて、かべの向こうで見つかることがある
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かべがうすいほど、粒が軽いほど、この「トンネル効果」は起きやすい
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太陽の中の核融合や、原子を調べるSTMという機械にも役立っている
きょうのナゾ

ねえ、どうしてねこや壁みたいな大きなものでは、このふしぎが見えないの?

大きなものでは「いるかも」がほとんどゼロになることは、わかっているんだよ

でも、その理由をぜんぶ知っているわけではないの?

うん。小さな粒だけの決まりごとが、どこまで大きなものにも通じるのか、いまも研究がつづいているんだよ
つぎはこれ!
おとなメモ(おうちの方・先生へ)
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「粒がいる場所がぼんやり広がっている」は、量子力学における波動関数(存在確率の分布)を、子供向けに単純化した表現です。厳密には粒子が同時に複数の場所に「実在する」わけではありません。
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トンネル効果は、古典的な軌道を保ったままかべの中を進む現象ではなく、有限の障壁内で波動関数が指数関数的に減衰しつつ、反対側でゼロでない確率で観測される現象です。
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トンネル確率は、障壁の幅・高さ、粒子の質量とエネルギーに依存します。人やねこのような巨視的な物体では、デコヒーレンス(量子的なふるまいが失われること)と極端に小さい確率のため、現実的には起こりません。
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太陽の核融合は、トンネル効果だけでなく、太陽内部の高温・高密度、反応断面積などが反応率を決めています。「トンネルだらけ」は本文中の子供の想像で、実際に起こる反応はごく一部の原子核に限られます。
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STM(走査トンネル顕微鏡)は、探針と試料表面の間の真空ギャップを流れるトンネル電流を測定し、電流と位置の対応から表面の形状を画像化する装置です。得られる像は測定結果の可視化であり、原子そのものを光学的に「見て」いるわけではありません。
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ねこ換算の「ねこ用ドア100枚」は、障壁の厚みと透過確率の関係を直感的に伝えるための比喩であり、特定の厚み・確率の数値を表すものではありません。
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きょうのナゾの「理由のすべてはまだわかっていない」は、巨視的な物体で量子効果が見られない主な理由(透過確率が極端に小さいこと・デコヒーレンス)が理解されている一方、量子のふるまいがどの大きさで日常の世界へ切り替わるのかという境目(測定問題を含む)には未解決の研究課題が残ることを指します。
参考にした資料
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ノーベル賞委員会 — The Nobel Prize in Physics 1986: https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1986/press-release/
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G. Gamow (1928) — Zur Quantentheorie des Atomkernes: https://doi.org/10.1007/BF01343196
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R. H. Fowler & L. Nordheim (1928) — Electron Emission in Intense Electric Fields: https://doi.org/10.1098/rspa.1928.0091
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NASA — The Sun: https://science.nasa.gov/sun/
(最終更新日: 2026-08-11)