4コマ「「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし」。1コマ目みい「多世界解釈なら、もう一人のみいがいるの?」、2コマ目ゆう「量子の世界についての考え方の一つだよ。別のみいを呼べると確かめられたわけじゃないんだ」、3コマ目みい「もう一人のみい、この半分お願い!」、4コマ目みい「もう一人も、遊びに行ったことにしよう……」
みいみい

ねえゆう、みいが右に行った世界せかいと、左に行った世界って、ほんとにあるの?

ゆうゆう

そこが気になったんだね。それ、「多世界せかい解釈かいしゃく」っていう考え方のはなしだよ

「もうひとりのきみ」は、見つかっているの?

「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし(「もうひとりのきみ」は、見つかっているの?)
みいみい

もうひとりのみいが、どこかの世界にいるの?

ゆうゆう

じつはね、「べつの世界にもうひとりいる」って、まだ見つかったわけじゃないんだ

みいみい

にゃんと!? みい、ほんとにいると思ってた!

ゆうゆう

ふたのじたおやつはこに、「別のあじも入ってるかも」って考えるのにているよ

みいみい

箱をあけるまで、別の味があるかはわからないんだね

ゆうゆう

「多世界解釈」も、それと似た「考え方」のひとつなんだ

みいみい

物語ものがたりのパラレルワールドみたいに、そこが見つかっている話じゃないの?

ゆうゆう

うん。これは、むずかしい計算をどうけとるか、という「考え方」なんだよ

みいみい

みい、かがみ見てくる! もうひとりのみい、はっけん!

みいみい

鏡のうらに、もうひとりのみいの部屋へやがあるかも!

ゆうゆう

みい、それは同じ部屋にいるみいが、鏡にうつってるだけだよ

小さなものは、いくつもの「ありそう」が重なる

「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし(小さなものは、いくつもの「ありそう」が重なる)
ゆうゆう

電子や光のつぶみたいに、とっても小さいものはね。答えが1つにまる前は、いくつもの「ありそう」がかさなっているんだ

みいみい

「ありそう」って、どういうこと?

ゆうゆう

池に石を2つ、ちがう場しょからとすと、なみが広がって重なって、しま模様もようみたいになるよね

みいみい

波が重なるなら、クッキーも重ねたら2まい食べられる?

ゆうゆう

小さなつぶも、それと似た「重なり」を作ることが、じっけんで何もたしかめられているんだよ

みいみい

重ねたクッキー、2枚とも食べられそう!

ゆうゆう

でも、はかったしゅんかんには、みいが経験けいけんする答えは、けっきょく1つなんだ

みいみい

おやつまでえないなんて、ちょっとずるいよ!

ゆうゆう

クッキーが2に増える魔法まほう、という話ではないんだよ

みいみい

えーっ! 「ありそう」は、おやつの数じゃないのかー!

ゆうゆう

重なったものが、なぜ1つに見えるのかは、博士はかせたちも考えつづけているんだよ

多世界解釈は、どう考えるの?

「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし(多世界解釈は、どう考えるの?)
ゆうゆう

多世界解釈ではね、測るときだけとくべつな「答えを1つにしぼるルール」を、あえてかないんだ

みいみい

じゃあ、測ったらどうなるの?

ゆうゆう

量子りょうし状態じょうたいは、ずーっと同じルールでわりつづける、って考えるんだよ

みいみい

同じルールのまま、答えがならんでいくんだね

ゆうゆう

すると、ちがう答えにむすびつく状態どうしが、たがいに重なりにくいまま、ならんでいくと読むんだ

みいみい

道が本当に2本にパチンとけるの?

ゆうゆう

そう考える博士もいるよ。でも、毎日のえらびごとを1つ2つと数えられるほど、かんたんな分かれ方じゃないんだ

みいみい

毎日の選びごとを、1つ2つと数える話じゃないんだね

ゆうゆう

道が2本に裂ける絵じゃなく、同じ楽ふを別々のパートに分けて練習れんしゅうする見り図みたいなものだよ

みいみい

道が裂けるんじゃなくて、楽ふを分けて練習する見取り図なんだね!

どうして、もうひとりに会えないの?

「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし(どうして、もうひとりに会えないの?)
みいみい

もし別の世界がほんとにあるなら、会いに行けないの?

ゆうゆう

うん。量子は、まわりの空気や光や測る機械きかいとかかわると、ちがう答えどうしの重なりを、たどれなくなっていくんだ

みいみい

空気や光とかかわると、重なりをえなくなるんだね

ゆうゆう

これを「だつ干渉かんしょう」……むずかしい言葉で、デコヒーレンスっていうよ

ゆうゆう

ミルクを水にまぜると、もとの一てきだけを、きっちりあつめなおすのは、とってもむずかしいよね

みいみい

会いに行けないみたいで、ちょっとこわいな……

ゆうゆう

……うん。ぼくは、ここにいるよ

みいみい

そっか……もうひとりのみいに会いに行けないの、ちょっとさびしいな

ゆうゆう

多世界解釈では、重なりがまわりに広がってたどりにくくなり、えだどうしがほぼ別々に見えると考えるんだ

みいみい

にゃんと!! 宇宙うちゅうぜんぶをふるいにかけたら会える?

ゆうゆう

今わかっている方法ほうほうでは枝を集めなおせず、別の枝と通信つうしんしたり行き来したりする方法も知られていないんだ

ねこ換算

「もうひとりのきみ」はいるの? 多世界解釈のはなし(ねこ換算)
ゆうゆう

コインを10回げると、おもてうらの出方は、ぜんぶで1024通りにもなるんだよ

みいみい

にゃんと!! せんまいってこと!?

ゆうゆう

ねこ換算だと、可能性かのうせいのカードを1枚ずつねこにくばったら、1024ひきのねこが必要ひつようになるってことだね

みいみい

カードを配ると、可能性の数の大きさが見えるんだね

ゆうゆう

うん。ただこれは、可能性の数がふえていくかんじをつかむためのたとえだよ

みいみい

コインを投げるたび、たくさんの世界が見つかるわけではないの?

みいみい

よかった。これは、コインの出方の組み合わせの数なんだね

ゆうゆう

コインを投げるたびに、1024個の世界が見つかった、って意味いみじゃないんだ

3ぎょうまとめ

  • 「もうひとりのじぶん」がいる別世界は、まだ見つかった証拠しょうこではない。多世界解釈という「考え方」のひとつ

  • 小さなものが重なって見える現象げんしょう(干渉)は、じっけんでたしかめられている。でも、多世界解釈だけがそれを説明せつめいする唯一ゆいいつの答えではない

  • 別の枝の自分に会う・通信する・行き来する方法は、今のところ知られていない

きょうのナゾ

みいみい

同じじっけんの答えが出るなら、どの考え方がほんとうか、どうやって決めるの?

みいみい

それって、まだだれにも答えが決まっていないなぞなの?

ゆうゆう

うん。……そうなんだ

みいみい

どの考え方がほんとうか、いつか決める方法をさがしているんだね

ゆうゆう

ちがう考え方どうしで、いつかちがう予測よそくが出るかを調しらべているんだ

みいみい

量子からふだんの世界がどう見えてくるかも、まだなぞなんだね

ゆうゆう

うん。そこも今、調べつづけているんだよ

みいみい

もうひとりのみいに会えないのは、ざんねん。でも、答えをさがすじっけんは、おもしろそう!

つぎはこれ!

おとなメモ(おうちの方・先生へ)

  • 多世界解釈は、1957年のEverettによる相対状態定式化を源流とする量子力学の解釈の系統です。「多世界」は単一の固定された理論模型の名称ではなく、分岐・確率・基底選択などをめぐって複数の議論があります。

  • 量子の重ね合わせ、干渉、測定統計(ボルン則)はじっけんで支持されています。これらの観測事実だけから、多世界解釈が唯一正しいとは結論できません。

  • 本文の「枝」は、異なる測定結果に対応する量子状態の成分を説明するための教育用の表現です。多世界解釈は、測定時だけの物理的な「収縮」を基本法則に置かず、状態が一貫してユニタリーに変化すると考える読み方です。

  • 「観測」は人間の意識に限りません。本文では、量子系が測定器・空気・光などの環境と相互作用する物理過程として説明しており、意識が世界を分ける・現実を作るという主張は含めていません。

  • デコヒーレンスは、系と環境の相関によって異なる状態間の干渉が実用上たどりにくくなる過程で、研究・実験対象です。多世界解釈で枝が古典的に見える理由として重要視されますが、これ単独で測定問題のすべての哲学的論点が解決したとは言えません。

  • 「選ぶたびに世界がきっちり2つに分裂する」という描写は強い単純化です。分岐の記述はデコヒーレンス・粗視化・基準にする観測量などと関わり、枝の個数を一般に一意に数えることは難しいとされています。

  • 多世界解釈、収縮を置く解釈、ボーム理論などは、多くの既存実験で同じ予測を与えます。全ての解釈が永遠に区別不能とも、すでに多世界解釈が実験で選ばれたとも書いていません。研究者は、解釈間で異なる予測が出せるか、量子からどのように古典的世界が現れるかを調べ続けています。

  • ねこ換算の根拠: コイン投げ10回の場合の数は2の10乗=1024通り。これは確率と組合せのたとえであり、多世界解釈における枝の実測数や証拠として扱っていません。

  • 「もうひとりの自分」に会う・通信する・移動する既知の方法はありません。既視感や夢などの体験は、科学的証拠として本文では扱っていません。

参考にした資料

(最終更新日: 2026-08-11)