
ねえゆう、みいが光の速さで走ったら、どうなるの?

おもしろい質問だねえ。まず、光には追いつけないんだよ
光に追いつくことはできるの?


にゃんで追いつけないの? うんとがんばればいいじゃん!

光のスピードは、1秒間に地球を7周半もするくらい速いんだよ

にゃんと!! そんなに速いの!?

おやつのカートをおしてスピードを出すのと、にてるかもしれないね

カート?

ゴールに近づくほど、おす手が急に重くなるカートだと思ってごらん

もっとおすと、もっとおもくなるの?

そう。速くなるほど、必要な力がどんどん増えて、光の速さではどれだけ力があっても足りなくなるんだ

にゃんと!! おやつ全部つかっても足りない!?

ゆう、走る前に食べる気でしょ!

ば、ばれたか。……でも本当に、どんなに大きな力でも光速には届かないんだよ
速い宇宙船では、時間がゆっくり?


じゃあ、うんと光に近いスピードで走ったら?

そのときは、おもしろい事が起きるよ。地球から見ると、宇宙船の時計はゆっくり進んで見えるんだ

みいだけ、おやつの時間が早く来るってこと?

えー、みいの時計だけ先に進むのはずるいよ!

ううん。みいの時計では、いつもどおりだよ。ゆっくりに見えるのは、地球にいるぼくの方からなんだ

にゃんで、ゆうから見るとちがうの?

光は、上と下の鏡の間を行ったり来たりする「光時計」を考えてみよう

うん、光時計で考えるんだね。もっと聞かせて!

外から見ると、横に動く時計の光はななめの長い道を進む。光の速さは同じだから、1往復に時間がかかるんだ

なるほど……見る場所によって、ちがって見えるんだね
遠い星までのきょりも短くなる?


じゃあ船が、ぺちゃんこのひらべったいねこになっちゃうの!?

なるほど、ぺちゃんこのねこを想像したんだねえ

じゃあ、船の中のみいも、ぺたんこになるの?

ふふ、それはちがうよ。船の中にいるみいには、なにも縮まって見えないんだ

よかった、みいはぺちゃんこにならないんだね!

ただ、地球から見ると、光速に近い宇宙船が進む向きの距離だけ、短く測られることがあるんだよ

あっ、船はそのままで、距離だけ短く測るんだね!

長い廊下を、進む向きだけ短く測るようなものだよ。宇宙船の中はふだんどおりで、目的地が近く感じるんだ

ゆうと、外から見る人とで、ちがう答えになるの?

同じ船なのに、答えがちがうんだね……ちょっと不安

うん。ぼくはみいのとなりにいるよ
窓の外は、どんなふうに見えるの?


ねえ、そんなに速く進んだら、窓の外はどう見えるの?

前から来る光は色が変わって、まぶしく明るく見えるよ。後ろの光は、暗く赤っぽく見えるんだ

前の光は明るく、後ろの光は赤っぽく見えるんだね

それに、まわりの星が、進む方向にぎゅっと集まって見えるんだよ

にゃんと!! 雨の中を走ると、雨つぶが前から来るみたいに感じるやつだ!

いいたとえだね。でもこれは、光の速さが変わるからじゃなくて、見る向きの変化なんだ

見えた形と、さっきの「短くなる」って、おなじことなの?

そこがおもしろいところでね。測った長さと、目に届く光がつくる写真の形は、じつは別のことなんだよ

あっ、測った長さと、写真の見え方は別なんだね!

光が体のあちこちから、少しずつちがう時間に届くから、写真はただ縮んだ形にはならないんだ
ねこ換算


光が1秒で進むきょりは、みいの1メートルジャンプ、約3億回ぶんなんだよ

にゃんと!! そんなにジャンプしたら、みいはくたくただよ

それだけの回数で、地球を7周半できちゃう速さってことなんだ
3ぎょうまとめ
-
質量の有るものは、どんなにがんばっても光の速さには届かない
-
光速に近づくと、外から見た時計はゆっくり進み、距離は短く測られる(本人にはふだんどおり)
-
窓の外の景色は前に集まって色が変わって見えるが、これは縮んだ長さをそのまま見た絵ではない
きょうのナゾ

じゃあ、みいが乗れる、光にうんと近いスピードの船は作れるの?

それって、まだ誰にもわからないなぞなの?

うん。人間の博士たちも、まだ答えを探しているところなんだ。ワクワクするね

ものすごい燃料の用意や、体に無理のない加速を続けることなど、なぞがいくつも残っているよ
つぎはこれ!
おとなメモ(おうちの方・先生へ)
-
真空中の光速 c = 299,792,458 m/s は、SIで正確に固定された定義値です。本文の「地球を7周半」は、地球の赤道周長を約40,075kmとした概算です(299,792,458m ÷ 40,075,000m ≈ 7.48周を「7周半」と表記)。
-
ねこ換算の根拠: 299,792,458 m ÷ 1 m/回 = 約3億回ぶんです。1回のジャンプを1mと仮定した換算で、みいが実際に1m跳べる、または連続して跳べるという意味ではありません。
-
「質量のある物体は光速に到達できない」は正確な結論です。静止質量 m > 0 の物体の全エネルギーは E = γmc²(γ = 1/√(1−v²/c²))で、v → c のとき γ → ∞ となり、有限のエネルギーでは到達できません。本文の「おやつのカートが重くなる」は、摩擦ではなくこのエネルギーと速度の関係を単純化したたとえです。
-
「速くなると質量が増える」という古い説明は避け、必要なエネルギー・運動量が増えると表現しています。
-
時間の遅れは、離れた観測者どうしの比較です。宇宙船の中のみい自身の時計や体は、本人にはいつもどおり進みます。本文で「地球から見るとゆっくり」と、見る立場を明示しています。
-
ローレンツ収縮(L = L₀/γ)は、ある慣性系で物体の両端を同時に測った結果であり、物体が力で押しつぶされる現象ではありません。「同時」の定義自体が観測者によって異なります。
-
目に見える像・写真には、物体の各部分から出た光が届く時刻の差が入ります。これによりTerrell–Penrose効果と呼ばれる、単純な収縮とは異なる見え方が生じます。本文の「写真はただ縮んだ形にはならない」はこれに対応します。
-
前方への星の集中は相対論的光行差、色の変化はドップラー効果、明るさの偏りはビーミングという別々の現象によるもので、時間の遅れやローレンツ収縮そのものと同一視していません。
-
光子は静止質量ゼロで真空中を光速で進みますが、光子自身の静止系は定義できません。本文では「光の立場ではどう感じるか」という体験談的な説明を避けています。
-
本文は重力を考えない特殊相対性理論の範囲の説明です。重力による時間の遅れ(一般相対性理論)は、ブラックホールの近くでは時間がおそくなるってほんと?で扱います。
参考にした資料
-
NIST — Definitions of SI Base Units: https://www.nist.gov/si-redefinition/definitions-si-base-units
-
Einstein Online(Max Planck Institute)— From light clocks to time dilation: https://www.einstein-online.info/en/spotlight/light-clocks-time-dilation/
-
Einstein Online — Waves, motion and frequency: the Doppler effect: https://www.einstein-online.info/en/spotlight/doppler/
-
CERN — LHC The Guide: https://cds.cern.ch/record/2809109
(最終更新日: 2026-08-11)